技術の概要
本解説は、複数の送信/受信アンテナを異なる方向に配置して仮想受信アレーを作り、測角精度を向上させるMIMOレーダ設計の要点を俯瞰する。グレーティングローブの影響を抑えつつ、開口長を拡大する配置手法と、その留意点を整理する。実務では、車載や産業用途での適用が想定される。
ユースケース
- 車載ADAS・自動運転
- 広角周囲検知
- 歩行者・小物体検知
- アレー設計最適化
- 周囲センサの統合
本技術は、複数の送信アンテナと受信アンテナを用いて、三つ以上のアンテナ群を第1方向、第2方向、第3方向に配置し、仮想受信アレーを作ることで、実素子数を増やさず開口長を拡大します。これにより、測角の精度と分解能が向上します。とはいえ、アンテナ間隔が1波長以上になるとグレーティングローブと呼ばれる偽ピークが現れやすく、誤検出の原因になります。本解では、第1群と第2群を互いに平行でなく配置し、残りの1方に第3群を配置して、グレーティングローブを抑制します。得られる利点は、少ないアンテナで仮想開口長を拡大できる点と、グレーティング抑制が設計次第で実現できる点です。留意点として、車両の形状・電力・周囲反射など実運用条件への適用性、相互結合の影響、ソフトウェアの複雑さなどがあります。
要旨は、 Nt×Na の仮想受信アレーを形成するMIMOレーダの技術であり、送信アレーと受信アレーの分割配置により、グレーティングローブを抑制しつつ開口長を拡張して方向推定を高精度化する点にある。具体的には、NtTx の送信アンテナ群と NaRx の受信アンテナ群を第1, 第2, 第3方向に配置する非等間隔・斜め配置を組み合わせ、仮想アレーの素子数を Nt×Na として扱う。これにより水平・垂直のビーム幅を狭め、DOA 推定の解像度が高まる。一方、素子間隔がλ以上になるとグレーティングローブのピークが現れやすく、FFT/MUSIC/Capon/ESPRIT などの推定法と併用した窓処理やCFAR による閾値設定が必要となる。実施形態では、符号多重送信を用い、各送信路に直交符号と位相回転を付与して分離する。受信部はCFAR による検出後、符号多重分離部で DeMulzncm による分離を行い、仮想受信アレー相関ベクトル h_after_cal を用いて方向推定を実施する。方向推定にはビームフォーミング、Capon、MUSIC などを適用可能であり、θmin–θmax, Φmin–Φmax の範囲を設定して空間プロファイルを作成する。配置条件として、NTx の間隔を1波長以上確保しつつ、第1斜め群と第2斜め群の間隔を工夫してグレーティングの重なりを抑制する。配置例として配置条件1/2/3/4/5 などが示され、仮想受信アレーの開口長が拡大するほど水平方向のピークが鋭くなる一方、サイドローブ・グレーティングの影響を抑制する。実用効果として、車載の ADAS・自動運転における周囲検知の信頼性向上や、幅広い視野でのDOA推定の精度向上が挙げられる。
