技術の概要
本解説は、MIMOレーダを用いて高分解能な到来角推定を実現する設計思想を俯瞰する。複数の送信/受信アンテナを斜め方向へ配置し、間隔を波長以上にとることで仮想受信アレーを拡大し、測角精度と分解能の向上と同時にグレーティングローブ抑制を狙う。
ユースケース
- 車載のADAS・自動運転向け周辺監視
- 歩行者・自転車など小型物体の高信頼検知
- インフラ監視・交通管理用途のセンサとしての活用
- 距離・速度情報を同時推定する統合センサとしての活用
- センサ融合による位置推定精度の向上
レーダ装置は、複数の送信アンテナと受信アンテナを組み合わせ、反射波の到来方向を推定します。送信と受信のアンテナ群を第1方向、第2方向、第3方向など複数の方向に配置し、隣接アンテナの間隔を波長以上とすることで、仮想受信アレーを拡大します。これにより、角度の分解能を高めつつ、グレーティングローブと呼ばれる偽ピークの発生を抑制します。配置には水平・垂直・斜めの組み合わせが用いられ、斜め群の間隔や配置方向を工夫してピークの抑制とメインビームの鋭化を両立します。実際の推定にはFFTやCapon・MUSIC・ESPRIT等の手法が用いられ、広角検出にも対応します。
本技術の要点は、送信アンテナと受信アンテナを用いたMIMOアレーにより仮想受信アレーを構成し、開口長を効果的に拡張して到来角を高精度に推定する点にあります。Nt個の送信アンテナは1波長以上の間隔で所定方向へ配置され、Na個の受信アンテナは第1斜め群と第2斜め群を含み、両群は互いに異なる斜方の方向へ配置されます。これにより、仮想受信アレーはNTx×Naの素子を有する構造となり、水平方向・垂直方向の2次元ビーム走査が可能になります。仮想受信アレーの配置座標は式(16)で表され、到来方向ベクトルa(θ,Φ)を用いて方位θと仰角Φを推定します。方向推定にはビームフォーミングやCapon・MUSIC・ESPRITなどのアルゴリズムを適用します。グレーティングローブ抑制のため、斜めアンテナ群の配置を水平反転対称としたり、傾斜を異なる値に設定したり、群間間隔を最適化したりします。配置条件として、 Ntの一部を異なる間隔で配置可能とし、Naは第1斜め群と第2斜め群を含み、これらは平行でない方向とします。仮想受信アレーの開口長を水平に拡張する設計では、CA(アレー補正)やアンテナ結合補正を併用して実用性を高めます。結果として、従来より少ない物理素子で測角精度・分解能を向上させ、グレーティングローブによる誤検出を抑制できます。
