技術の概要
本解説は信号伝送回路と電子機器の全体像を俯瞰します。周波数の高い信号を伝送する際、信号強度を維持するための工夫を説明します。コモンモードノイズの低減と反射を利用した強化の両立を解説します。
ユースケース
- 車載機器間の高周波データ伝送の強化
- 車載カメラと表示装置の高信号品質伝送
- EMC対策を含む高周波伝送ラインの改善
- 同軸ケーブルを介した差動信号伝送路の最適化
- 受信側検知率向上と信号検出安定化
本技術は、信号伝送回路と電子機器の組み合わせで、入力信号の周波数帯域に応じた伝送強度の向上を目的とします。コモンモードノイズを低減するコモンモードフィルタを用い、2つの伝送線路を等しい特性インピーダンスに保つことでノイズの発生を抑えます。第3回路は入力信号の一部を反射させ、第3伝送線路を介して出力側へ再投入します。反射係数はZ1とZ2の差で決まり、周波数が高くなるほど反射が大きくなります。結果として第3信号のエネルギーが増加し、出力の信号強度が向上します。注意点として、反射を過度に行うと別の成分まで影響する可能性があるため、部品値は用途に合わせ適正化します。第2実施形態では、第4回路と第5回路を追加し、低周波領域の挙動を制御して全体のインピーダンス分布を整えます。これにより、EMCと伝送効率の両立を図ります。
本技術の要点は、差動信号を伝送する回路系において、コモンモードノイズを抑制しつつ伝送信号の一部を反射させて出力信号の強度を増強する点にあります。コモンモードフィルタは第1インダクタと第2インダクタから構成され、伝送線路は第1伝送線路13と第2伝送線路14を用い、それぞれの特性インピーダンスを50Ωに揃えます。第1回路18には第1コンデンサ181、第2回路19には第2コンデンサ191を配置し、直流成分を遮断します。第3回路20は第1抵抗203と第3コンデンサ204を組み合わせ、周波数に応じてインピーダンスを低下させます。第2伝送線路14のインピーダンスと比べて低くなるとき、反射係数Γが大きくなり、第5伝送線路経由で第2インダクタへ再入力する信号を生み出します。反射された第7信号は第1伝送線路13経由で出力端子21へ伝達され、同軸ケーブルを通じて第3信号のエネルギーを補強します。反射の程度はΓ=(Z1−Z2)/(Z1+Z2)で決まり、周波数が高いほど大きくなります。図2の周波数とインピーダンスの関係、図4・図5のアイパターンの比較から効果を検証します。第2実施形態では、第4回路24と第5回路群を追加し、低下開始周波数を動的に調整することで低周波のインピーダンス変化を抑え、全体のインピーダンス分布を滑らかにします。これにより、伝送帯域全体で信号強度の向上とノイズ抑制を両立します。適用分野として車載機器・通信機器などを想定できます。
