技術の概要
この技術は、回路誤差によるレーダ検出性能の劣化を抑制する。送信信号に複数の位相回転パターンを付与し、受信側で逆方向の位相回転を適用してコヒーレント積分を行い、ドップラー解析でターゲットを推定する。さらにランダム性を導入してノイズフロアを安定化する。
ユースケース
- 広角レーダ検知
- 車載安全システム
- ドップラ周波数解析の高精度化
- MIMOレーダの干渉抑制と分離
- ノイズフロアの白色化と検出性能安定化
本技術は、送信信号を生成する部と、複数の位相回転パターンを周期ごとに付与する送信位相回転部、複数の送信信号を多重処理する多重部、受信アンテナを介して反射波を受け取り、受信信号を基底帯へ変換してコヒーレント積分を行う受信部を備える。複数の送信周期ごとに、位相回転量を2πの整数倍になるよう順次加算する系列を用い、各周期ごとに位相回転量を変動させる pattern を採用する。さらに、受信側では逆方向の位相回転を適用して相関値ACを算出し、Ne回の周期でコヒーレント積分してACCを得る。これにより、回路誤差由来の DCオフセットやIQミスマッチの影響を抑制し、特定ドップラ成分のノイズフロア上昇を低減する。相補符号を用いる場合は符号ペア間の位相シフトを揃え、レンジサイドローブを維持する。さらに、位相回転パターンをPN符号やGold符号等でランダム化し、ドップラ領域のノイズを white化 して検出の安定性を高める。
本発明は、送信側でNe周期分の送信周期内における位相回転量を2πの整数倍となるように配列し、送信符号に対して第1の位相回転を付与する送信位相回転部と、それに対応して受信側で逆方向の第2の位相回転を付与する受信位相回転部を備える点に特徴がある。符号生成部はL長の送信符号を提供し、位相回転制御部はNe×Ndの区間でPC( )パターンを出力する。変調部はBPSK/QPSK等で符号を変調する。受信側の相関演算部は、AC(k,m)と送信符号Cn(m)の相関を求め、受信位相回転部はACP(k,m)として逆相を掛ける。コヒーレント積分部はNe回の周期でACC(k,v)を蓄積する。ドップラ解析部はACCをNd個取り出してDFT/FFTを実行し、距離と相対速度を推定する。送信DCオフセット成分やドップラ変動が残る場合でも、PCをランダム化することでACCに現れる定常的な位相変動を崩し、フロアレベルの上昇を抑える。複数の送信アンテナを用いる場合、各アンテナで異なる位相回転パターンを適用し、干渉抑制と検出性能の両立を図る。相補符号では、ペア間の位相シフトをゼロに保つ工夫を取り、符号間のレンジダイナミックレンジを維持する。挙げられる位相回転パターンにはPN符号、M系列符号、Gold符号が含まれ、複数レーダ装置間での相互干渉低減にも寄与する。さらに、MIMO構成では送信アンテナ間で異なる位相回転パターンを割り当て、送信・受信の組み合わせによる識別性能を向上させる。これにより、IQミスマッチ・DCオフセット由来のノイズを抑制し、広角検知・距離推定の精度を安定化する。
