技術の概要
エンジン回転数の変動に合わせて基準信号の周波数を補正する能動騒音低減技術の概要を解説します。周波数ずれを軽減することでキャンセル音の追従性と安定性を高め、騒音低減効果を向上させます。
ユースケース
- 車室内のエンジンこもり音の低減
- ハイブリッド車の始動・急加速時の騒音抑制
- 複数スピーカ・マイク配置による広域ノイズ抑制
- 周波数変動の追従性を高める周波数制御の実装
- 補正値マップの外部更新による性能の継続的向上
本技術は、車両内のエンジン騒音を能動的に低減する仕組みを、一般の読者にも理解しやすい言葉で説明します。エンジンの回転数に対応する第1周波数を有する基準信号を生成し、マイクロフォンから得られる誤差信号を用いて適応フィルタの係数を逐次更新し、キャンセル音を出力します。動力源の回転数変動量が所定値を超えると、基準信号の周波数を補正した第2周波数を生成させ、適応フィルタは第2基準信号に基づくキャンセル信号を出力します。周波数のずれを補正することで、急な回転数変動時にもキャンセル音が追従しやすくなり、騒音低減の効果を高めます。補正は、始動タイミング起点の補正値マップや期間ごとの補正値決定など、複数の方法で実現され、記憶部に補正データを保存して外部装置と連携することもできます。
本発明の要点は、SAN-FILTERED-LMSアルゴリズムをベースとした周波数適応と、回転数変動時の周波数補正を組み合わせて、騒音低減性能を広帯域で安定化させる点にあります。ノイズ源はエンジンこもり音であり、騒音成分はエンジン回転数の整数倍周波数に対応します。基準信号生成部は、正弦波生成部と余弦波生成部から成り、周波数f0は f0 = RPM × ORD / 60 で求められます。キャンセル信号は y(n) = A(n) xs(n) + B(n) xc(n) で表され、A(n)およびB(n)は適応フィルタの係数です。更新は A(n+1) = A(n) − μ rs(n) e(n)、B(n+1) = B(n) − μ rc(n) e(n) であり、e(n) は誤差信号、μ は更新速度を決めるパラメータです。エンジン回転数の変動量が所定値を超えると、第1周波数を補正した第2周波数を生成し、適応フィルタ13から第2基準信号に基づくキャンセル信号を出力します。補正には補正方法1(始動タイミング起点の経過時間に応じた補正値)と補正方法2(期間ごとの回転数変動量に基づく補正値)があり、補正値はマップとして記憶部に保存されます。補正値マップは外部機器と通信して更新可能で、環境条件が適切でない場合には第1周波数を用いた通常動作へ戻す設計です。さらに、帰還フィルタを用いて出力キャンセル信号に対するフィードバック制御を実装することで、広帯域化と安定性の両立を図ることができます。本技術は、車両の窓開閉、温度、エアコンの風量など環境要因の判定を行い、適合時のみ周波数補正を適用する動作例も提示します。実装上は、μやαなどのパラメータ調整によって更新速度と安定性を共に制御します。これにより、エンジン始動時や急加速時など、周波数が急変する場面でも高い騒音低減効果を維持できます。
