重量平均分子量2000以下のキレート剤による膜ろ過排水処理

技術の概要

本解説は、重金属を含む排水をキレート剤で処理し、膜ろ過で清浄水を得る方法を紹介します。重量平均分子量が2000以下のキレート剤を用いることで、膜閉塞を抑えつつ処理効率を高めます。適用例として火力発電所排水や水産加工排水が挙げられます。

ユースケース

  • 工場排水の重金属除去
  • 火力発電所排煙脱硫排水の処理
  • 水産加工排水の浄化
  • 排水処理装置の設計・導入
  • コスト削減と運転の安定化

本技術は、重金属を含む排水から金属を除去するしくみです。排水中に重量平均分子量が2000以下のキレート剤を加えると、重金属と結合した汚泥ができます(分子量の重さの平均を示す指標)。その汚泥をろ過で分離し、下流の膜で浄化します。ろ過は精密ろ過膜(MF膜)か限外ろ過膜(UF膜)を用います。膜閉塞を抑えるため、キレート剤の分子量を小さく設定します。キレート剤にはピペラジン系ジチオカルバミン酸塩などが用いられ、必要に応じて凝集剤を併用します。必要であればpHを4〜10の範囲に調整します。洗浄にはクエン酸・次亜塩素酸・塩酸を定期使用します。対象はカドミウムを含む排水や火力発電所の排煙脱硫排水などで、浄化水は法規の放出基準を満たします。

本発明の要点は、膜ろ過を前提とする重金属排水の処理設計を最適化する点です。排水に重量平均分子量が2000以下のキレート剤を添加すると、重金属は低分子量のキレート複合体として形成され、膜沈殿・汚泥化が抑制されます。後工程のMF膜またはUF膜での分離により、重金属を含む汚泥を取り除きつつ、膜の清浄性を維持します。洗浄はクエン酸、次亜塩素酸、塩酸等の組み合わせで行い、洗浄頻度は膜種と流量に応じて調整します。キレート剤はジアルキルジチオカルバミン酸塩、ピペラジン系ジチオカルバミン酸塩等を好適とし、必要に応じて無機・高分子凝集剤を併用します。pHは処理水の4〜10を想定し、6〜8が特に安定します。実施例ではOJ-FLOCK CH-140(Mw315)を20 mg/L添加した場合が、3400級剤と比べて膜差圧の増大が少なく、80日以上の長期安定運転を示しました。膜洗浄はデッドエンド・MF/UFで定期実施し、洗浄液としてクエン酸、次亜塩素酸、塩酸を用います。処理水は放流水の基準を満たし、年間処理量は規模に応じて拡大可能です。

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